空中建築展 「モノは語る」
Day:2025/3/7-9.14-15.21.23(22日を除く8日間)
Place:鶴身印刷所
昭和14年築、3代続く印刷工場を改修し4代目により「印刷所」の名を残して2018年文化複合施設として始まった鶴身印刷所にて、空中建築展を開催しました。
本展は「残す・遺す」をテーマとしたインスタレーション展です。
「印刷所」の名を残して複合施設として生まれ変わった鶴身印刷所。空中建築の下に広がる砂漠に残された「足跡」。何を残し・遺し、その先に生まれるモノが何なのか。
本展示を通して、その「何」について、来場された方々とお話をしました。
この記事は、8日間にわたり各々の「今」の心情を残してもらった記録となります。

鶴身印刷所での展示
大阪京橋にある鶴身印刷所は昭和14年築の元印刷会社です。現在は建物を残し複合施設として改装され運営されています。展示の空間は、入居されてる方のハンドメイド品が販売されていたり、家主自らが買い付けてきた食器の販売、畑でとれた野菜などを販売し、石版印刷を始め様々なワークショップや教室を開かれている空間でした。空中建築のテーマが「住」なので、「人の営み」が感じるその場所での展示はぴったりでした。保管期間では約3週間。展示期間では8日間「借り住まい」という形で展示させていただきました。









砂の中に名前を残してもらう
「残す・遺す」ことをテーマにした展示は、来場いただいた方に名前を書いていただき、それを砂に残していただきました。「書いた紙をご自身で砂の上に残してください」と声を掛けると、埋めたり、撒いたり、挿したりしている様子が楽しそうだったのでその瞬間の写真をたくさん撮らせていただきました。 名刺よりも少し小さいサイズの紙片に書かれた筆跡がこの会場に訪れた方の「足跡」となりました。



みなさんの残したいモノ・コトは何ですか?
「みなさんの残したいモノ・コトについて聞かせてください」と言う質問の紙を貼ったパンフレットを来場者の方にお配りいたしました。「残す・遺す」という広いテーマ。残したいモノを書いていただいた中に「なにもない」と書かれた方もいらっしゃいました。自らの意思で残さないからこそ、そこに全く新しいモノやコトが生まれることもあるのだと思いました。書いていただいた紙片には皆さまの「今」の信念や心情がギッシリと詰まっており、読んでいて微笑ましくなりました。その紙片を、掲載いただいた方のみを集めて一冊の冊子にまとめたいと考えております。
残していただいたモノを、誰かと共有できるように残す大切な作業をこれから行なっていきます。






朗読イベント
3月23日(日)展示の最終日にクロージングイベントとして朗読ライブを開催しました。「残す・遺す」ことをテーマに、空中建築の下にある砂の上を舞台に3つの主人公の物語を3部書き下ろし、朗読家のたんぽぽさんに朗読いただきました。
この日、20人ほどのお客様に来ていただきました。
17時30分開場、18時開演。comecoさんにドリンクとお菓子をご用意いただき、約1時間の間に3部作の朗読を楽しんでいただきました。会場はたんぽぽさんの生声だけが会場内に響きわたるしっとりとした特別な一夜となりました。
このお話は、「残すことは未来を作る」「残されたモノは作り手と繋がることができるツールにもなる」の意味を込めて書きました。展示初日は誰かの足跡がなかった状態の砂の上でしたが、最終日になるとたくさんの足跡で溢れ、賑やかな砂の上となりました。残された3つの主人公。ひとりぼっちではなく、自分たち以外にも「誰か」はそこにいた。足跡を残す。声を残す。
朗読:朗読家たんぽぽ
ドリンク:comecoLABO
原作:Ibuki









石版印刷体験
鶴身印刷所では、印刷所時代に石版印刷の技法を利用し印刷していました。今回、その技術と機材をお借りして展示期間中に石版印刷の体験ができます。その体験を通して木の板に空中建築のデザインを印刷し金具をつけてキーホルダーを作っていただきました。
版にローラーでインクをつけて、印刷したい木片に印刷していきます。
印刷機の横についている取手をくるくると回すと印刷機が平行に動き出し版と木片が圧着されていきます。細かいところまでつぶれないないようにキレイに印刷するには、インクの量や回すスピードなど細かい調整が必要になります。この指導をしたのは私でなく、印刷所の家主である鶴身知子さんです。
参加された方も貴重な体験をされたかと思います。









お供え
印刷所内にある米粉を使ったパンやお菓子などを作ってらっしゃるカフェのcomecoさんから
おこめぱんをお供えいただきました。ありがたいことに、空中建築を見ると手を合わしたくなるとのことでおこめぱんをお供えていただきました。それをきっかけに、私もお供え始めました!
最初はおこめぱん(ソイミルキー)、次はおこめのロールケーキと白菜と椎茸、最終日にはおこめぱん(プレーン)八朔と椎茸とお庭で拝借した葉を榊に見立て祭壇っぽく整えました。
そして搬出日にはおこめぱん(あおさ)をお供えいただきました。
最後の最後までお供えいただき、本当に嬉しい…作家冥利に尽きます。
お供えいただいたおこめぱんはリベイクしていただきました。米粉を使用されているので晩御飯のメインのおかずとしていただいたり、お昼ご飯のおかずとしてもいただきました。食感もモチモチしているので腹持ちもよいのです。ぱんではなくやはりご飯ですね。美味しかったです!また食べたい!ありがとうございました。





2024年10月末。とある建築イベントにて初めて鶴身印刷所を訪れました。2年ほど前からそのイベントが開催される度に気になっていたものの行けずじまいでしたが、今回は必ず行こうと決めて最初の目的地として向かいました。しかし、私が行く日の印刷所はイベント外の日(建築イベントは2日間の開催でしたが印刷所は1日だけでした)ダメもとで行ってみて開いていたらラッキーの気持ちで向かいました。まだ日差しも暑い中、色々と事情があり森ノ宮の駅から30分かけて歩いたため(最寄り駅は京橋)汗ばみながらなんとか辿りつくと、建物内のカフェを発見し入った場所がcomecoさんでした。イベントの日はたくさんのお客様で溢れていたことや、昨日の展示がそのまま残っているから中を覗けること。などを教えていただき、お米のロールケーキとドリンクを注文し待っている間に建物内を少し見せていただきました。そこにいたのが家主の鶴身知子さんでした。お休みの日であるためお客様はおらずでしたが、展示はそのままのため館内の説明をしていただくことを約束し一旦お店に戻ってケーキをいただきました。
その後、私一人だったこともあり、館内の説明を時間をかけて丁寧に説明していただきました。(贅沢でした)お話が進むうちに建物の魅力をどんどん感じ、この場所で空中建築の展示ができないか。そんな話までしていました。印刷所を訪れてから約3時間。他の建築物も見に行こうと予定していたけど、鶴身印刷所だけで満足していました。もし、一日ズレて訪れていたら知子さんとお話する機会はおそらく殆どなかっただろうし、空中建築の展示もきっとなかったかと思います。そして、今回の展示で出会った人との出会いもなかったかもしれないと思うと、あの日訪れたこと全てが必然だったのではないかと今振り返るとそう思います。
あの日から展示について何度も訪れ、私のしたいことを汲み取っていただき最後まで伴走していただいた知子さんに感謝いたします。応援、ご協力いただいた方々、ご来場いただいた皆様にも深くお礼申しあげます。ありがとうございました。
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